Wikipediaによると、枯渇性資源ではない、現生生物体構成物質起源の産業資源をバイオマスと呼ぶそうです。なんだか難しいですね。バイオマスには色々な種類がありますが、ここは「木質バイオマス」と「廃棄物系バイオマス」の二つについて私見たっぷりで解説します。
【木質バイオマス】
バイオマスとして一番よく聞くのは「木質バイオマス」ではないでしょうか。
木質バイオマスというのは、主に森林資源のこと。森林を保全するために間伐(間引きのようなもんですね)をした木材を、放置せずに燃料にしましょう、あるいは、木材加工の過程で出る端材やC材を使いましょう、ということで、燃料にして発電する事業が各地で立ち上がっています。発電した電気は固定価格買取制度でかなり高値で買い取ってもらえるとあって、バイオマス発電所の立地計画は全国各地に、今も増えています。
ただ、本当に採算が合うのか?本当にそれは「枯渇性資源でない」のか?実は色々な疑問があります。
人件費が高い日本で、燃料にするだけの木を荒れた山から切り出してくる。それも毎日何百トン単位で?割に合うのでしょうか。
ここは正直に申しますと、かなり難しいです。(もちろんきちんとうまく行っているところもありますが。)ではなぜみんな「木質バイオマス発電所」を作っているのでしょう?
実は今建設中の(もしくは稼働中の)多くのバイオマス発電所は海外からヤシガラ(PKSという、油ヤシを絞った後の残りですね)を輸入して燃料にする計画なのです。それって、原油や石炭を輸入して発電するのと同じような考え方ですよね・・発電した電気が高値で買い取られて、その費用を負担するのは消費者、となると、複雑な心境です。
↓のリンクは「エレクトリカル・ジャパン」というサイトです。発電種別や出力ごとに発電所の位置などが分かりますので、火力(バイオマス)にチェックして、出力の大きい順にチェックを入れていってみてください。大きなバイオマス系の発電所はほとんど海沿いにあります・・。
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/size.html.ja
「再生可能エネルギー」という響きは世間に定着してきましたが、再エネにも色々あります。必ずしも環境負荷が低いと言い切れないものも、中にはあります。
【廃棄物系バイオマス】
廃棄物系バイオマスにも色々あります。「生ごみ・食品廃棄物」「家畜ふん尿」「下水汚泥」「農業残渣」「木質系廃棄物」などなど・・
利用方法としても、飼料化、堆肥化、エタノール化、ガス化などなど色々な試みがなされてきました。廃棄物といっても賞味期限切れの廃棄食品や、食品工場の規格外や残渣などそのまま(もしくは簡単な加工)で家畜のエサにできるものは飼料として使うのが一番いい使い方なのではないかと思います。(もちろん廃棄が出ない/出さないのが理想ですが、現実には・・)
飼料も人間の食料も海外からの輸入に頼っている中で、まだ食べられるものを大量に廃棄するよりは食べてもらえる方がいいですものね。
以下、廃棄物系バイオマスの資源化方法について、簡単に説明してみます。
- 飼料化・・まだまだ食べられるパンや食品工場の規格外食品などはぜひ牛や、豚など家畜のエサにして活用しましょう!エコフィード、という取り組みで農水省も推進しています。塩分、油分などの栄養バランスの調整や、乾燥などある程度の加工は必要ですが、輸入の乾燥飼料よりも美味しいようで(「嗜好性が高い」というそうです)、安価で、かつお肉もおいしくなると、いいことづくめのようです。(が畜産農家さんにとっては配合飼料を一定量機械給餌するよりは管理の手間がかかります)
- メタン化・・餌として使えないような廃棄物系バイオマスでもメタン化はOKというものが多いです。生ゴミ、し尿、牛糞や汚泥なども原料に使えます。水分量の調整や温度管理、原料のバランスなどの管理は必要ですが、発生した可燃性ガスは発電にも使えるため、廃棄物の有効利用に役立ちます。発酵残渣は液体肥料としても使えますが、詳しくはまた。
- 堆肥化・・メタン化とは違い、エネルギー利用はできませんが簡単な設備で肥料が作れるため広く普及しています。ちなみにメタン化は嫌気性発酵で、堆肥化は好気性発酵。最終的に肥料として使えるのは同じですが、利用する菌が違うのです。
- エタノール化・・廃棄物系バイオマスのエタノール化は例えばサトウキビの搾りかす(バガス)や廃糖蜜などから作られます。法規制が多く、バイオエタノールの利用が難しい日本ではあまり普及していませんが、バイオエタノールは車の燃料としても諸外国(特にブラジルや欧米)では使われています。ほかにも食料と競合しない原料としてセルロース系(木質や草木類、紙、廃棄綿など)を使ったエタノール化は実証なども進んでいるようですが、生産コストの低減などに課題が残っています。
廃棄物系も木質系もバイオマスの利用は、利用技術そのものと同じくらいに全体のしくみ作りが重要です。木質バイオマスも、いい材は建築用に使って、合板などにも使えないものを燃料用というように「うまく」使う工夫があるところは持続性のある事業の組み立てができます。廃棄物系も今はにわかに固定価格買取制度で活気づいてますが、買取制度なしでもその後持続できるような仕組みを考えないと20年後に捨てられた大小のメタンプラントが全国に・・ということになるでしょうね。バイオマス利用のしくみづくりはケースバイケースで組み立てが必要で、なかなか一筋縄ではいかないのです・・